頭の中のさまざまのこと

すきなこと、考えていること

町田直隆さんへの手紙

町田直隆さんへ

 

はじめまして。私は数年前から石田ショーキチさんのファンをやっている者です。今年のMOTORWORKSのライブは、チケットバトルに敗れ、配信で視聴しました。あなたがリードボーカルを務めるにあたって、ショーキチさんから長い長い手紙を受け取って……いないそうなので、私が長い長い手紙を書いています。

 



 

 

 

私がMOTORWORKSを知ったのは、黒沢健一さんが亡くなってバンドが眠りについたあとでした。もちろんひどく落ち込みました。その件については過去記事に書きましたので割愛します。

過去記事

 

ですから、バンドが復活すると知ったときの私の喜びは説明できないほどでした。遠方の友から突然すてきな手紙が届いたような、何十年も前に見た晴れた日の木々のきらめきを思い出したような、私が詩人なら間違いなく詩を書いていたような、そんな気持ちでした。それはあなたが参加することを知っても変わりませんでした。

 

考えてみたのですが、それは私が最も恐れていたのが、私が黒沢健一さんのパフォーマンスを生涯で一度も目撃することはないという事実の再現ではなく、MOTORWORKSとその輝きが遠く過去のものになり、消費され尽くして、やがて消えていってしまうことだったから、ではないかと思っています。

言うまでもなく、バンドの輝きはどこにもあります。誰かの記憶、記録、インターネットの海の片隅、バンドメンバーからもお客さんからも、その光はいつまでもなくならないでしょう。間に合わなかったバンドはまるで星のようです。誰かはその星に降り立ったことがあるのです。そして1光年ずつ遠く離れていって、過去から届く光を、過去と現在とで受け取ることができます。しかし、私には過去がありません。だからたぶん、さみしかったし、不安だったし、恐れていました。

あなたはこの恐れを吹き飛ばしてくれました。

あなたは輝いていました。バンドがそこにいて、音楽が鳴っているのを見ました。それはとても素敵なことでした。今でも思い出すことができます、狭いステージの上から轟音の光が放たれて、フロアにぎゅうぎゅうのお客さんたちがそれらを反射して、誰もかれもみんな命を燃やしていたのを、私はノートパソコンの画面に張り付くようにして見ていました。

私は黒沢健一さんを知りません。私は彼に間に合いませんでした。ですからあなたが既にそのように臨んでくれたように、あなたと彼をどうやって比較できるのでしょう。私はただあなたのパフォーマンスをたいへん楽しみました。私はただあなたを目撃しました。ライブを観ながら、思い出せなくなるのを望んですらいた、たぶんずっと欲しかった「過去」が、一瞬ずつ私に生まれていくのを感じていました。

私があなたにお伝えしたいのは、私がMOTORWORKSを諦めなくてもよいこと、私にMOTORWORKSを待たせてくれること、私がとうとうMOTORWORKSに間に合ったことは、私にとって胸いっぱいの幸運と幸福であるということです。

 

 

7光年先から届く光だけを眺めていた日々は、2023年9月2日に終わりました。あなたが終わらせたのです。本当にありがとうございました。

 

 

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追伸

次は世界中のお客さんが全員参加できるハコでお願いいたします。