今年も推しと一緒に初詣に行ったあとライブをやるという恐ろしいイベントに参加したので、その話をします。
推しの名前は石田ショーキチといいます。演劇集団キャラメルボックスに楽曲を提供したり、たまにアニメの仕事もしています。あと、スピッツのベーシスト田村くん、ウルフルズのドラマーサンコンJr.さん、元BANGEE JUMP FESTIVALのギターボーカル町田直隆さんとMOTORWORKSっていうバンドもやっていますので、よろしく。
ライブ会場は鎌倉のCafe GOATEE。一旦そこに集合してから、鶴岡八幡宮に初詣に行き、記念写真を撮って現地解散、指定の時間までにカフェに戻り、ライブスタートになる。
ショーキチさんのライブチケットは先着メール受付という信じられない形態で販売されることがあり、今回もそれだった。私はGmailの予約送信機能を使って優勝し、整理番号1番であった。お店からの返信メールに書いてあった整理番号を確認したときはさすがに震えた。1番ってほんとにあるんだね。なんだか、宝くじの当選者はどこかに必ずいるみたいな、ファンタジーな気持ちで当日を迎えた。
同じく参加するフォロワーに現地でご挨拶する予定があったので、前日に買っておいた菓子折りと財布と文庫本を持って鎌倉へ。人混みをすり抜けてお店に着き、参加者の方々と整理番号を確認し合い、番号順になんとなく列を形成する。カフェはビルの上階にあり*1、螺旋階段にぐるりと並ぶ格好になる。一番乗りで店内に入る。ショーキチさんが脇でふつうに歯磨きしていてビビる。震える足を叱咤し、ショーキチさんが座るであろう椅子の正面に腰を下ろす。こじんまりとした素敵な雰囲気のお店で、椅子を限界まで多く配置してくれていたが、参加人数はたぶん三十名前後だろう。緊張して喉カラカラなので早速ドリンクを注文し、ちびちびやりながら文庫本を読んだ。頭に入ってくるわけない。フォロワーとは無事に店内でご挨拶とお菓子のお渡しができ、お返しもいただいてしまって恐縮したけど嬉しかった。優しそうなひとでよかった。
程よい時間でぞろぞろと店外へ出て八幡宮へ。ショーキチさんの白いダッフルコート(かわいい〜)と寒色のハットを目印にして歩く。彼は背が高いのでギリギリ見つけられる。人混みがすごい。今日は成人の日なのだ。今日のために昨日美容院で担当のお兄さんにゆるふわオシャレパーマをかけてもらったのだが、受付してくれた別のお兄さんに「成人の日前日でバタバタしていてごめんなさいね」と挨拶されたのを思い出した。大勢の人たちが気持ちと労力をかけて今日を祝っている。素敵なことです。
通りすがりの親切な方に集合写真を撮ってもらい、長い階段を登り、お参りをする。あとがつかえていてあまり時間をかけられなかったけど、かろうじてウクライナとパレスチナの即時停戦だけは願った。その時つい癖でお賽銭を投げ入れてしまい、今たいへん後悔している。性的マイノリティへの立場は表明しないけどマイノリティ含む皆さまからのお金は欲しいです〜みたいな人権意識のかけらもない卑怯な腰抜けどもにお金払うんじゃなかった。だからおみくじは買わなかった。
鶴岡八幡宮さんアンケート送付対象になってますよね。無回答っすか?
お参りを終えたあとは現地解散になり、ショーキチさんはライブの準備のため一目散にカフェへ帰っていく。私もフォロワーもおみくじを引かなかったので、一緒にさっさと帰ることにした。途中、先を行っていたはずが引き返してきたショーキチさんに「ここ、通れないみたいですよ」と声をかけられ、なるほど何やら儀式が始まっていて通行止めになっていた。遠回りしてぶらぶら歩くことにした。大きな池のそばにたくさん鳩がいて、人慣れしまくっていて、保護者たちに連れられた小さい人たちに群がりまくり、ギャン泣きで鳩に襲われたと大人に言いつけている人もいた。トラウマにならないといいのだけど……。
なかなかの遠回りにはなったが無事に大通りまで辿り着き、フォロワーとぽつぽつと話しながらカフェへ帰ってきた。ふたたびのドリンク注文。ほかの方たちは慣れたものでお土産を買って帰ってきたりしていて、格の違いを見せつけられて震えた。鳩サブレーって、買ってもいいのか。ライブで心がいっぱいいっぱいでそんな発想はなかった。来年は買おう。鳩サブレーおいしいから大好き。1日500枚食える。
ショーキチさんの使用ギターはもちろんアコースティック、今日は6弦だった*2。ボディをよく見ると、ピックガード*3の形に色が薄くなっているところがある。こんなに細かいところまで気がつける距離に座ったのは初めてだった。せっかく整理番号1番だしとイキって真正面に陣取ったけど、やっぱり生意気だったかもしれない。今ならお客さんと一切目を合わせずにソロライブをやりきったユタカの気持ちがわかる。
マジで目が合わなくて面白かった。おれたちが見えないのか、こんなに近くにいるのに
1曲目がまさかの蒼天航路で、もうライブが終わったのかと錯覚しそうになった。なんとなく物語のラストを飾ってくれる歌のイメージ。「切り抜き飾りたいくらいの」のところで声に合わせて音がひとつずつ移っていくところが大好き。早速めちゃくちゃ声調子良さそうで最高。次のPlanet Queen超大好きだから嬉しかった!私はショーキチさんのつくる音楽のことを、もし月に音楽が流れているとしたら、きっとこんな音だろう、という音楽だと感じているふしがあるんだけど、この曲はまさにそれで、聴いているといつでも月に行ける。その次には、このほうがずっと弾きやすい、と言ってかなり大胆にアレンジされた2曲があって、支える手。「長過ぎるこの道のりの果て 約束の場所に手が届く」のメロディーが好きすぎる。
そして年末に続いてビートルズのカバーがあり、ショーキチさんがジョンレノンの転調がいかに天才的かということを力説していた。私はギターで遊ぶにあたり音楽理論を全く学んでいないので、全部へ〜〜って聞いていた。逆に全く学ばなくたって楽しめるのも音楽の力のひとつだなと思いつつ、知識があれば解像度の高い楽しみ方ができるのだろうとも思う。世の中の作曲家さんたちはえらい。すごい!いつもありがとう!
休憩タイム。この時に、境内で撮った集合写真をショーキチさんがGoogleドライブにアップロードし、URLをQRコードにしてくれて、iPadに表示させて置いてくれた。無事に写真もらえたけど、もうなんか面倒だからiPhone勢はAirDropでいいのでは!?Android勢は知らん。
休憩後の一発目はMISS。サビ前までのメロディーが特に天才。ピアノを弾きながら歌う、客席に向けられた背中がでかい。ハロー・センチメンタル・パンクスは、近年結構いいじゃんと思うようになったというScudelia Electro時代のアルバムElectroks収録。これもサビ前が好き。ピアノ演奏鉄板のSUPER SONIC LEVELはScudeliaの1枚目のアルバムに収録されていて、デビューでこれはさすがに洗練されすぎ。天下のプロデュース集団のご挨拶代わりの実力でぶん殴られてしまう。最高だよ!
続いてこれもScudeliaのIf Only I Could Kissは低い声で歌うところが多くてセクシーでよい。ショーキチさんは絶対音外さないファルセットマンなところも素敵だけど、低い声もたいへん魅力的で、「come back to me again」のところが最高。何度聴いても最高なので何度でもセットリストに入れてください。
ところで、どこかのMCで2月にやるScudeliaのライブの話が出たんだけど、これはもう正式に再結成ってことでいいんですか?昨年のショーキチさんデビュー30周年記念ライブ3連発の中でぬるっと復活したときはあの日限りなのかと思っていたので、再結成なら再結成でちゃんと声明を出して公式サイトとかSNSとか整えてもらっていいですか?未だに半信半疑です。あと、「(メンバーの)寺田さんが乗り気で、ハコ*4見つけてくるから!って言って、おさえてきたのがキャパ100人のところで。100人じゃどうにもならないですよって言ったら、そお!?って。で、2分で即完売」とショーキチさんは笑っていたけど、「そお!?」じゃないんだよな。100席が2分で完売してもまだあなた方のファンの人数がわからないんですか?寺田先生聞いてますか?いいから次は黙ってKアリーナでやれ。わかったな。
絶対やると思った七里ヶ浜AWAYも最高だった。七里ヶ浜というのは地名で、今回のライブ会場である鎌倉からそれほど離れていない、その名の通り海沿いの浜辺である。この曲はシングルCDとして発売されていて、そこにはたくさんの音や効果で構成されている通常版のほかに、ピアノとエレキギターだけで演奏されているバージョンが収録されており、私はそちらのほうが好きなので、ピアノ弾き語りで聴けてとても嬉しかった。私がもしお酒飲めるタイプの人だったら、影響されて絶対帰り道で白ワイン買ってた。
本編最後には、プロデュースを手掛けているガールズコーラスグループ、まちだガールズ・クワイアに提供したくじら座のミラのセルフカバー、年末ライブでは「湿っぽくなっちゃうから」演奏されなかったMOTORWORKSのThe End、そしてScudeliaのさよならノーチラス号。The Endは「「The End」まで見届けたエンドロール 誰もが席を立つ喧騒に紛れて 僕はといえばまだプロローグ」という冒頭の歌詞があまりにも置いていく/置いていかれる側の唐突さを表しすぎていて、メロディーの美しさも相まってかなりさみしい。「See me now...」と歌われたので頑張ってガン見した。見てるよ!!真正面から見つめてるよ〜〜!!!そのあとにパワーありありのノーチラス号をやってくれて助かった。これも1stアルバムの、しかも1曲目。名盤すぎんだろ。
そのあとのアンコールはお客さんからのリクエストでルカ、そしてショーキチさん選曲の厚木の空でフィニッシュとなった。厚木の空はミュージシャン友達のマエソワヒロユキさんのフェイバリットで、ギター2本で裏拍でジャカジャカやるのが楽しいらしいのだけど、ショーキチさんだけで演奏してくれたのも素敵だった。
年始から元気そうな推しの顔を見ることができ、私にはたいへん嬉しい2024年の始まりとなった。が、ショーキチさんはご家庭を襲ったインフルエンザの地獄の中、受験を控えたお子さまを守るため大奮闘されていたそうで、本当にお疲れさまでした。私が高校や大学受験のときも同居家族たちは知らぬ間に気をつけてくれていたのだろうか……と思いを馳せながら家路についた。
2月のScudeliaには既に敗退しているけれど、今年ほかにもライブやってくれるのならまた挑戦したい。お互いいつ死ぬかわからないんだから、会えるときに会っておかなければならない。もうこんなことを痛感しなくて済むような年になってほしい。全員死ぬな。長生きをしろ。私を置いていくな。
セットリスト
M-01 蒼天航路
M-02 Planet Queen
M-03 BLACK BIRD (Hip-Hop version)
M-04 20th Century Flight (Hip-Hop version)
M-05 支える手
M-06 I'm Only Sleeping (THE BEATLES)
M-07 I'll Be Back (THE BEATLES)
M-08 Here, There And Everywhere (THE BEATLES)
M-09 MISS
M-10 ハロー・センチメンタル・パンクス
M-11 SUPER SONIC LEVEL
M-12 If Only I Could Kiss
M-13 PHOTOGRAPH
M-14 七里ヶ浜AWAY
M-16 The End
M-17 さよならノーチラス号
En-01 ルカ
En-02 厚木の空
*1:だから、足の不自由なファンは参加が難しいと思う。何も考えず調べずにライブや芝居のチケットを取ることができる自分の特権性を考える
*2:ギターはふつう弦が6本なんだけど、倍の12本あるタイプもあり、ショーキチさんはそれを持っていてたまに使っている
*3:ギターやベースのボディに取り付けてあるパーツ。アコースティックギターの場合は、中央にあるサウンドホールという穴の周りに貼ってある。ギターは音を出すためにピックという道具で弦を弾くんだけど、それでジャカジャカやっていると、勢いあまってピックでボディを引っ掻いて傷をつけてしまうことがあり、それを防ぐためのパーツである。付け替えることもでき、ギターのカスタマイズポイントのひとつ。外しっぱなしの人もいる
*4:コンサートや演劇公演などを行う会場のこと