頭の中のさまざまのこと

すきなこと、考えていること

久しぶりに帰省した話

母が墓参りに行くというので、数年ご無沙汰している私もついていくことにした。

 

墓は生家の近くにあり、生家には現在父親がひとりで住んでいる。父に会って世話になるのは複雑だが仕方ない。数年前、とあることがきっかけで父にギャンブルで多額の借金があることがわかり、家を追い出したのである。

私は父を許していないし、そもそも許すとか許さないとかの話でもない。詳細をここに書くつもりはない。私は父にもう興味がない。それなのに会えば父は屈託なく笑顔を見せるし、食事も奢る。私たちにいい顔をしたいのだ。ここぞというときに人に謝罪もできないくせに見栄を張るこういう態度が気にいらないが、寿司に罪はないので大人しく払わせた。寿司はとても美味しかった。寿司はいつ食べてもいい。ちなみに、食事中の話題は、田舎あるある1*1:ヤバい親戚、あるある2:ヤバい隣人、あるある3:60代でも若者扱いされる町内会、あるある4:近隣住民の動向にやたら詳しい住民(なんで知ってんの??ってことを何故か知っている)、の豪華4本立てでお送りされました。

 

家に着いたらまず持参した位牌を仏壇に供え、挨拶をした。道中の無事をありがとうございました。ご無沙汰しており申し訳ありませんでした。ただいま帰りました。そんな感じ。特定の信仰を持っているわけではないけど、こういうときは何となく、そういうものの存在を自分の中に感じる。

完全に家を自分の城にしている父は、いつの間にかコーヒーミルと、豆と、あの注ぎ口の細いシャレたやかん的なものを買い揃えており、私にコーヒーを振る舞った。そんなカネがあるなら私に返せやと思いつつ、味は嫌いではなく、クソが…と思いながら飲み、ベースをつま弾きながら話すギター値上がりの話に相槌を打った。座るソファの影にネックが取り外されたギターだかベースだかのボディと、そのネックが見えた気がしたけど、無視した(テメェ買ったんか!?)。父はもちろんアマチュアだし、知識やスキルが何十年前で止まっているとはいえ、ちょっとした音楽の話ができるのが楽しいと感じてしまう自分が嫌になる。父も楽しそうに話す。これで家庭崩壊クソッタレギャンブラーじゃなければ、素直に会話を楽しめたのに。本当に残念だ。

 

田舎の風呂場は寒い。まず廊下が寒い。ヒートショックまっしぐら。というわけで父を斥候に出し(一番風呂に入らせて風呂場を温めさせ)、そのあとで数年ぶりに生家の風呂に入った。床のタイルが陶器?磁器?なので、人が使ったあとでも少し冷たい。シャンプーとトリートメントがボタニカルのやつで、マジで調子に乗りすぎだろとキレながら使った*2。脱衣所も寒いので早々にリビングに戻った。生理中だったので、父に汚物処理させるのも忍びなく、使用済みナプキンは100均で買ったサニタリー袋に入れて持ち帰ることにした。生理がある人、大変だよね。みんなお疲れさま!

私は血で汚すと悪いのでパジャマは持参したが、母は田舎あるある5:(故)祖父母が買ったクソダサいパジャマを着て寝た。田舎の二階は寒い。敷布団、タオルケット、毛布を使った。

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田舎あるある6:子どもが幼少期に使っていて未だに捨てていないダサいタオルケット*3

久しぶりに隣に人がいる状態で眠った。母は速攻で寝落ちており、疲れたのだなと思った。そういえば新幹線のホームで寒いというので握って温めた手も指も細く、手の甲のしわは高齢者のそれだった。久しぶりに触れた母の手の感触に否応なく年齢を感じ、ちょっと覚悟した。けれどまあどんな覚悟も実際の死の前では無意味なので、その時が来たら大いに泣いてやろう。そう思いながら寝た。

 

 

 

見知らぬ天井とは言わないが、かなり久しぶりに見るそれをしばらく眺めた。今日はメインイベントの墓参りを午前中に済ませなければならない。起きた。血はつけずに済んだようだ。階下からミルで豆を挽くゴリゴリという音が聞こえる。田舎あるある7:バリアフリーのバの字もない造り ─急勾配の階段─ を降りて、コーヒーをもらった。するとランチを一緒にするだけのはずだった叔母が突然訪ねてきた。田舎あるある8:こういうときは報連相しない。

仕方がないので父の車に同乗させ、墓参りから一緒にした。この叔母も色々あって私は心底軽蔑しているのだが、私も大人なのでそんなことは言わず、適当に会話して過ごした。

車窓から見える景色がいちいち懐かしい。祖父母が贔屓にしていた和菓子屋、おいしい料理屋、少しだけ通ったやたらでかい小学校、ささやかすぎる川、もう疎遠になって顔も覚えていない幼馴染の家のあたり、あそこが全てだった公園、子ども会をやった会館。仏花を買う農協すら懐かしすぎて感慨深い。急に冷え込んだので、朝から灯油ステーションには人が絶えない。田舎あるある9:灯油ストーブが主流。

 

墓参りはスピーディーに終わった。花を替えて水を入れ、落ち葉を払い、蝋燭と線香をあげて、手を合わせる。ご無沙汰しており申し訳ありません。これから帰りますので、道中お守りください。また来ます。よろしくお願いします。という感じ。この墓の管理問題、父母が存命のうちになんとかしといてほしい、と念を押しておいた。どこかに移すとしても魂抜きとか面倒だよ〜。勘弁してほしい。

ランチは、叔母から親族の近況を聞きつつ無事に終わった。最後の支払ジャンケンで叔母が優勝したので父母と一緒に大爆笑した。ぜったい私たちに奢らせるつもりで誘ってきたくせに、自分が優勝しちゃうのうける。もっと高いもの食べておくんだった。

父にそのまま近くの駅まで送ってもらった。年末年始は来るのかと聞いたら行くと言う。楽器店を覗きたいと言っていたので、付き合わされるかもしれない。アコギが気になるらしい。どの口が言ってんだマジで。

 

帰りは爆睡のうちにあっという間に関東に着いた。お夕飯は作る気がなかったのでお弁当を買って帰った。おわり。

 

 

 

 

 

*1:この記事に登場する田舎あるあるは、あくまでも私個人の観測範囲内のことであり、日本国内すべての「田舎」と呼ばれる地域の性質を表すものではありません

*2:製品に罪はない

*3:キャラクターはかわいい