もくじ
年末年始の話
この時期は妙な気分になる。誰かが鍋に水溶き片栗粉を放り込んだような、ウォータースライダーからスノードームのオイルの中へ滑り落ちるような。不思議と嫌な感じはしない。このままぬるりと2022年へ突入していくのだろう。30歳になったし、何かに焦るべきという気もするし、実際問題仕事どうしようかなとか色々あるけど、まだ目を逸らし続けている。相変わらずだめだな〜〜〜。
この時期に思い出すのは生家のことと、それにまつわる帰省の、あの妙な気怠さだ。
中部地方にある私の生家は母のそれでもある。家庭崩壊ギャンブラーマン(実父)が家庭崩壊の引き金を引くまで、年末年始は家族揃ってそこへ帰省することが多かった。元々住んでいた母方の祖父母が他界して早何年、日々のメンテナンスは近くに住む叔母に任せてはいるけれども、やはり家は誰かが住まないと傷むということで、なんとなくそういうことになっていた。
暖房の熱の篭った車内のにおい。街明かりが吹き飛んでいく。妹が持ち込んだももクロのライブDVDをナビの小さな画面で眺める。途中のサービスエリアで安いラーメンを食べる。最寄りの高速を降りて、コンビニで夜食と歯ブラシを買う。小学4年まで通った小学校を通り過ぎる。祖父母が贔屓にしていた美味しい和菓子屋さんも、叔父の家も。来たばかりの頃はキャンキャンうるさかった隣の犬の声は聞こえない。ケージでいつも飛び跳ねていた愉快なあの犬ももういない。長らく人を迎えていなかった我が家の軋む扉を開ける。真っ先に仏壇へ道中の無事の感謝と帰省の挨拶をする。荷物を運ぶ。暖房をつける。体感角度90度、バリアフリーのバの字もない階段をのぼって2階へ。干しておいてもらった布団。ここでも暖房をつける。どこで買ったのかわからんダッセえパジャマを出す(ああいう謎のパジャマってマジでどこで売ってるんだろうね)。無駄に広い家なので寒い。窓もやたらと大きいし。風呂を洗い、湯を張る。夜食。テレビをつけてみる。何もやっていない。順番に風呂に入る。風呂場も寒い。脱衣所が既に寒い。ヒートショックって知ってる?風呂場の床のタイル(磁器)はキンキンのビールくらい冷えている。ビール飲めないから知らんけど。あと浴槽はステンレスか何か知らんが金属ぽくてこれも冷たい。なんとか温まり、脱衣所で着替え。虫に注意。だから寒いっつってんだろ。着替え終わったら新しい歯ブラシで歯を磨き、寝る。
翌日から掃除をする。寒い。掃除機が古すぎる。それと墓参り。途中で仏花を買う。軽く掃除して花を替え、水をかけ、お線香とロウソクに火をつける。手を合わせる。頻繁に来られないことを毎回詫びてしまう。この墓も、いずれは私が管理することになるのか。罰当たりだけど面倒だ。ところで、法事も全然出席しないし、このご時世でお坊さんも呼ばないのでもう随分とご無沙汰しているけど、ご住職かわいいんだよな。余った水をそのへんの原っぱに向かって柄杓をぶん回して撒きながら戻る。親族へ挨拶回り。そのようにして数日を過ごす。
元旦は仏壇へお参りして、また1年の健康を祈る。家族の、自分の、友達たちの、推したちの、そして推したちの大切な人たちの。お雑煮は父方の祖父のレシピ。生前はお雑煮担当で、とてもとても美味しかったらしいのだが、母曰く、教えてもらった通りに毎年作っているのに別物の味になるとのこと。ふうん、まあいいじゃん、おいしいよ、と返しながら、祖父の味を全く覚えていないのがさみしい。帰る前にも仏壇に挨拶をし、道中の無事を祈る。また来るからねと口に出さず呼びかけて、戸締まりをする。布団は叔母に任せる。歯ブラシを捨てる。高速を走る。関東の家に着くのは夜中になる。やっぱりコンビニへ寄って、好きなものを好きなだけ買う。玄関の扉を開ける。暖房をつける。お湯を沸かす。お風呂を洗って湯も張る。特になんでもないテレビをつけながら夜食を食べる。順番に風呂に入る。寝る。たっぷり寝坊して、昼過ぎに起きだす。
こう書くと何だか忙しないけれど、実際は、そう、流れるプールの中で逆らわず、けれど違うリズムで歩いているような感じだ。背中で感じるその流れの中で、確かに色々をこなしているのに一瞬停滞しているような、それが許されているような気分になる。日常から半歩はみ出たこの数日間、それを家族の誰もが暗黙に了解しあう、この時間が好きだった。もう二度とないだろう。
最近の話
ありがたいことにまだ仕事をクビにならずに済んでいる。ところでみなさんに言いたいことがあります。
薬がありません。
もうぜ〜んぜんないの。業務停止命令からの他メーカー製の同種同効品への注文殺到からの出荷調整からの代替品を探して八千里からの考えることはみんな同じで更なる出荷調整の嵐からの先発見積祭りからの大阪の医薬品倉庫火災からのアレそれで(怪我人がいなくて何よりでした)、S井製薬とかN本ジェネリックとかO原とかもうぜ〜〜んぶ出荷調整。何百品目も。なので定期的に処方してもらってるお薬があるみんなたちは、もしかしたらそういう何か色々のアレで急に違う名前(でも中身は同じだから!)で薬が出たりするかもしれないけど許してください。採用薬品がコロコロ変わるたびに私が頑張って院内マスターデータつくっているので…。お薬の残りが心配だったら、飲み切る前にいつもの薬局に相談してね。あとお医者さん方におかれましては比較的供給されている薬に処方変えてください。退院処方いっぱい出すのもやめて。ウオオオオ〜〜〜ッ死ぬな〜〜〜ッッカルボシステイン〜〜!!セレコキシブ〜〜!!ラグノスゼリー〜〜!!パクリタキセル(30mgおまえだよおまえ)〜〜!!アブラキサン〜〜〜〜!!
あと面白いな〜と思ったのは、"インフルエンザ患者が少なすぎて、治療薬の流通が停滞する"という現象が起きていることです。ラピアクタ点滴を発注したらほぼ明日ですけどくらいの使用期限のものが納品されて、こんなんもらっても使わずに廃棄することになっちゃうからもっと期限長いのと交換して!って担当営業さんに電話したら、これが市場で出回ってるいちばん期限の長いやつなんで…って言われてへ〜ってなった。だから治療薬が確保できていないわけではないけど、なるべく入院が必要になるほどひどくなってほしくないから、予防接種を是非よろしくっす。
科長と出荷調整の情報共有をしながら愚痴り合う日々を過ごしつつ、Hello Talkはまだ続いている。相変わらずめちゃくちゃ訂正してもらっている。最近やり取りし始めたアメリカ在住の黒人男性とは、性教育の話で盛り上がった。私がアセクシャル/アロマンティック/クエスチョニングだと伝えても、それが何なのか説明する必要がなくて、これだよこれこれ〜と思った。なんかエロチャットみたいな流れにされちゃうかなと思ったけど、真面目に話せてよかった。相手も「僕たちの会話いいよね」って言ってくれて嬉しい。こういう話は日本の日常生活ではまだまだしにくい…。
まだ都内にお出かけや観劇にはかなり行きづらい。新宿の推しギャラリーにも随分行っていない。長く自粛しすぎていて、いま何がどこまで許されるのか、許してもいいのか、相変わらず全くわからない。うちの劇団もずっとリモートミーティングを続けていて、主宰や劇団員が関わった外部公演も、延期になってしまうことが多かった。それでもなんとか今年本公演を1本やれて、やっとワークショップも徐々に再開していこうかというところだ。うちはあんまり教訓や畏怖みたいなものを持ち帰ってもらえるタイプではないんだけど、来年もやれるなら、また約90分間、お客さまにグダグダくすくすしてもらえたらいい。
ましゃ(福山雅治)のライブにも行っていない。ずっと延期になっていた全国ツアーをとうとう再開できているけれど、私は行かないことにした。普段のライブでは、禁止されている場内撮影もみんなやってしまっているし、それでいてスタッフさんたちも対応ができているとは言い難い部分があって、普段以上の厳しさが必要な帰省退場や私語厳禁などの感染症対策を、客側がきっちり守れるとは思えなかったからだ。そんなリスクの高い空間にいて、万が一病院に持ち帰ってしまったりしたら、責任を取りたくても取れない。きっと同じように、行かないことで色々なものを守ろうとした人たちもたくさんいるだろう。
そうこうしているうちに歌舞伎界では名優たちが去り、その真横で名題昇進が披露されたりした。全てを目撃することなどできないのは最初からわかっていたはずだったのに、やりきれない思いばかりが募る。誰が悪いわけでもない。ライブも芝居も、行かないと決めた過去の私自身ですら。ただままならないだけ。
なんでもない日を繰り返し
歌い続けてから幾年が過ぎ
約束ばかりが増えていく
空っぽの空の向こうに
今年の話
今年買ったもの紹介します。
1. YAECA (ヤエカ)のチノパン
ユニクロのを卒業したくて買った。チノは気取らずにいい意味で適当に履けるのがいいよね。形が色々あって、太めのシルエットに挑戦したかったので、タックテーパード。ありがたいジップフライです。裾詰め不要(私は身長約155センチ)。丈感が絶妙すぎる。どんな靴履いてもかわいい。この色はベージュ。もっと暗いカーキも、明るいホワイトもあるよ。恵比寿のお店で色々試させてくれた店員のお姉さん(に見えた)どうもありがとうございました、週8で履いてます。おかげでもう右足の裾の糸が取れてきました。
2. knotの腕時計
オンオフ兼用。6年くらいモンディーンの時計を使っていたら電池交換から1年保たず止まるようになり、オーバーホール出すくらいならと気分転換に買い替え。リーズナブルでカスタムが豊富な日本ブランド。写真だと白飛びしてるけど、フェイスはアイボリーです。ネットで見てる時は全然候補じゃなかったのに、お店で普通のホワイトとつけ比べたら、びっくりするくらい優しくて一気に惹かれてしまった。白いノートとかを眩しく感じるタイプの人にも見やすいんじゃないかな。カスタムはフェイス、ベルト、バックル(色のみ)を全部選べる。ホームページであれこれ組み合わせて眺めるだけでも楽しいよ!あとモンディーンもすごくいい時計です。見やすい。
3. ウルトラスーパーファンタスティックファビュラスゴージャスハイパードープな眼鏡
大学生の時にレーシック手術をしたんだけど、ここ数年日常生活には困らないものの視力の低下を自覚していたので、観劇用につくってみた。お世話になったのはマトイニコメさん。下北沢にもあるよ。数年前に母のお誕生日プレゼントリクエストでお世話になり、もちろん安くはないけど、ラインナップも接客もぜんぶ素敵だったので、自分の時もここでって思ってた。結果、今年めちゃくちゃ大活躍してくれてすごく嬉しい。買ってよかった。
メールで来店予約をする際に、レーシック手術の経験があることと、映画や演劇の鑑賞時に着用したいことを事前にお伝え。当日はまず予算を伝えて、そこから逆算した価格帯の中でフレーム選び。そのあと視力検査、レンズとオプション選び、フレーム調整、お支払い、受取は郵送。フレームのブランドのケースに、お店オリジナルの眼鏡拭きを添えてくれる。写真にあるやつね。ねこのやつ。かわいい。ヒアリングと検査がかなり丁寧で感動する。あと選んだフレーム褒めてくれるので最高の気分になる。八角形かわいいでしょ。最初に紹介してくださったやつ見て「いや、もっと攻めたいんですよね」ってワガママ言ったら出てきた。最近かわいいサングラスも欲しくなってきた。私の愛する藤原啓治みたいな、薄い青色のやつ。
4. タイガーの水筒
仕事用。300ml。仕事中はほっとくと飲まず食わずで過ごしてしまうので、意識的に水分とったほうがいいな…と人間29年目(購入当時)にして気づいて買った。朝これに水道水を詰めて出勤して、退勤時には空になるのを目標にしてチビチビやっている。多少の眠気覚ましにもなる。ありがとうタイガー。紛争鉱物を使わないんだね。えらいよタイガー。
5. ヘラルボニーのエコバッグ
知的障害の特性のある芸術家たちの作品を、こういうプロダクトに落とし込んで販売している会社さん。よくポップアップ出店してるので、出会いやすいと思う。これは数字の作品。ほかにもお洋服とかコースターとかお財布とか色々ある。エコバッグって今いろんなところが出してるけど、アートを日常に添えられるのっていいなと思った。美術館で眺めるだけがアートじゃないよね。
6. VEJAのスニーカー
3年くらいNIKEのエアハラチの黒を履いていて、次は人生初・白系に挑戦したいなと思いつつも、NIKEに対しては多少思うところがあり(でも手を使わずに履けるあのスニーカーは本当に素晴らしいし優しいと思う)、家族とカブらないブランドで探して見つけた。ゴツすぎず細すぎないローカット。プロモーションをほとんど打たない代わりにそのお金を品質に還元し、コットン生産者さんたちとの契約書を公開し、廃ペットボトルをリサイクルしたポリエステルを使うなど、めちゃくちゃサステナブルなブランド。取扱店の方曰く、廃棄を減らすために流通量が少なくて、希望サイズになかなか出会えないらしいんだけど、私は運がよかったんだなあ。スニーカーは出会い。唯一の難点は取扱店が少ないことです!They New Yorkも日本で試せるようにならないかな…。
7. RED CARDとPARIGOTのコラボジーンズ
これは新しいジーンズとお気に入りのジャケットとスニーカーではしゃぐ私。
これもユニクロのスキニーをやめたくて買った。やわらかくて履きやすい。ローライズです。形はスリムテーパード。細くてほぼスキニー状態だけど。
PARIGOTはセレクトショップなんだけど、ジーンズの取扱が豊富なので、ジーンズ欲しい時はお店覗いてしまう。もはやPARIGOTのことジーンズ屋さんだと思っている節がある。yanukのも素敵だったんだけど、予算的に手が出なかった。
8. キングジムのフラッティ
見てもらえばわかると思うんですけど、こんにちは、クリアファイルに入れてても書類をくちゃくちゃにしちゃう村の者です。いい加減どうにかしたくてツイッターで泣きついたらKiEさん (最高のブログを書くDIVA)に「これどうですか」って秒で教えてもらって翌日買いに行った。ラベンダー、ももクロのれにちゃんカラー。すごくいいです。映画のフライヤーとかこれに入れて持ち帰ってる。キングジムさんは理解(わか)ってんだよな…。KiEさんキングジムさん本当にありがとうございました。
結構買ってるね。びっくりした。もっとセーブしてたつもりだった。でもどれもとてもいいお買いものでした。
来年は白とかピンクのお洋服を着てみたい気分。石のついた指輪も欲しい。物欲って、あれが欲しいとかこれが好きだみたいなもののあらわれで、それは自分で自分を知ることだし、新しい自分の気分を見つけることだから、悪いことじゃないと思う。私、ピンクの服が着てみたいなんて今まで思ったことなかったのに、こんな気分になるなんて、ふーん、我ながら天邪鬼でおもしれー女…。
2021年の目標振り返り
- 日用品をアップデートする
チノパンとジーンズとスニーカーのアップデートに成功した!身につけるものはやっぱり気になるし、ちゃんと自分で選んだんだぞという確認が頻繁にできるので良い。
- 本を読む
今年前半にチェーホフのかもめとヘミングウェイの老人と海は読んだけど、そこからは全然ダメだった。来年はなんと私のかわいいギター(福山雅治)と、私のいとしい夜(真田広之)がそれぞれ小説を原作とする映画に出演するので、読んでから観るか、観てから読むか、それが問題です。
- 音楽する
昨年よりは音楽やれたと思う!相変わらずサボり気味ではあるけど、今年前半には何度かスタジオで遊んだりした。ウクレレの友達とはまだ会えていない。来年早いうちにセッションしようね!という話はしているので、とても楽しみ。練習しようね。
- 絵を描く
数えてみたら54枚だった。まあまあ…かな…?でも数年前に買ったきりのモルフォの教本、碌に開いてもいないのでダメです。練習しようね。
おわりに
という感じです。人生。それはともかく今年も恒例グループ展開催できてよかった。前回話したやつです。こんなの義務でも義理でもなんでもないのに、毎年毎年よくやるよな。楽しいからいいんだけど。ちなみにまだアイデア全く出せていないので、限界ギリギリ1週間前完成目標チキチキレース、コーナーで差をつけろという展開です。来年も無事にやれたらいいね。
前回の話↓
あとビビって自粛しまくってたわりに舞台も少し観劇できてよかった。去年チケット取ってたのに前日に中止になり泣く泣く払い戻したリベンジ観劇で氷魚くん登場シーンがあまりにも神々しくてちょっと泣いちゃったピサロ、冒頭の忙しい人のためのあらすじ紹介コーナーでピンスポ浴びて登場した勘九郎くんがあまりにもかっこよすぎて泣いちゃったコクーン歌舞伎夏祭浪花鑑、からだの素晴らしさと譜めくりの妙技をたくさん堪能できたイスラエルガルバンの春の祭典。幕が開き、そして閉まっていくのを、まだこんなに祈るように見つめることになるなんて思わなかった。投票に行こうね。
ハッピーホリデイズトゥーミー。
Flawless Victory...