ときどき思い出す温度がある。
私は大学生の一時期、倉庫内軽作業のアルバイトをしていたことがある。
色々な現場に行った。高級靴の梱包、マタニティウェア通販のピッキング、冷凍食品の印字確認、などなど。いわゆる日雇いみたいなやつだ。天井が高くてやたらにでかい倉庫はおもしろいし、行き交うフォークリフトもおもしろかった。少しの工夫で作業効率に違いが出たり、初めてやることでも午後になると少し慣れてきてスピードが上がったりするのは楽しかったが、基本的に単純作業なので、なかなかしんどく感じる瞬間もあったりした。
そんな現場では、日本以外の国や地域にルーツのあるのであろう人たちも大勢働いていた。
たぶんその日の現場の終わり頃だったと思う。いつものように最後にちょっとした掃除をみんなでしていた時、外国ルーツであろう女性(表象)がひとり、笑いながら私の肩に触れてきたことがあった。
私とその人が何を話したのか、それともたとえばちょっとゴミを引き取るとかぶつかりそうになって避けたとか、そんなおしゃべり未満のやりとりがあったのか、何にも覚えていないけど、そのとき肩に感じたあたたかさだけをずっと覚えている。
たぶん嬉しかったんだと思う。あの人が今もどこかであたたかいままだといいなとときどき思う。